概略
 2021年、自身を題材にした映画『あの頃。』の公開が決まり、再びスポットが当たることの期待されるあやや。ハロプロの中でも珍しい当初からソロとしてデビュー、アイドルの王道をいった曲調はもちろん、高い歌唱力も注目されている。アイドルポップスからバラードまで手掛けたあややのシングルレビューをお送りする。


シングルレビュー(以下、歌詞の引用元は各シングル記載の歌詞カードから、引用部分は""にて本文と区別する)



ドッキドキ!LOVEメール
1st ドッキドキ! LOVEメール

作詞・作曲:つんく
編曲:高橋諭一
2001年4月11日発売 売上7.2万枚

  デビューシングル。編曲は高橋諭一が担当しており、バンドサウンドを中心にしたトラックになっている(イントロのドラムはドラムのクレジットがないので打ち込みっぽいが)。王道のポップナンバーで明るい曲調なのだが、サビのフレーズは切なげというところがまた素晴らしい(歌詞の内容はとても明るいのに)。なお、企画アルバム『Naked Songs』ではさらに生音をフィーチャーするタイプの鈴木俊介がアレンジャーを担当しており、目の前で聞いているよう。このアルバムでセルフカバーされている曲では一番好き。
 歌詞はタイトル通り「ドッキドキ」で "恋してる" "あの人" からのメールを待つという内容。今となっては時代を感じるが「メール」をテーマに取り入れるのはなかなか先進的("ホームページ" とかも結構使ってるし)。"この店圏外っぽいわ…" というのも秀逸だし。"下北沢にも慣れた" "一人でコーヒー頼んだ" というのは当時14、15くらいでデビューしたてのあややとも重なって説得力が増して感じられる。"不思議と不思議" "今までにないこの感じ" といった初恋のキラキラした面が時に切なく感じられるメロに乗って歌われている。
 PVではダンスは抑えめに(手を大きく広げる振り付けが主)、「あやや」を押し出すのに注力している感じ。東京タワーがロケットみたく飛んでいくとか巨人になっているあややとかパーマンのコピーロボットとかアニメ・特撮を意識したポップな描写が多く見られる。あややが時折ウインクしているのが何とも堪らない。



トロピカ~ル恋して~る

2nd トロピカ~ル恋して~る

作詞・作曲:つんく
編曲:渡部チェル
2001年6月13日発売 売上6.4万枚

 2か月ぶり、夏を前にしたサマーポップソング。ハロプロセールス全盛期ながら売上はそこまで伸びずという結果に。編曲は数は少ないが名アレンジをハロプロにも残してくれた渡部チェル。ダンス☆マン繋がりの人選かな。前作に引き続きのバンドサウンドで娘。含めて全盛だった飛び道具もりもりの王道ハロプロサウンドは抑えめなのが新鮮。前作に続きこちらも『Naked Songs』で鈴木俊介アレンジで再録されている。
 歌詞は夏の旅行がテーマ。冒頭を含めたセリフが電話で、彼とのやり取りを切り取っている。ただ夏の旅行そのものを描いているわけではなく、「旅行の準備」がテーマになっていて、旅行前日で歌詞が終わっているのが秀逸。旅行の準備についてもつんくのやけに細かく具体的な事物のオンパレードが素晴らしい。"水着" "トランク" とかは予想できるとして、"パスポート" 、"食事とかマナー" 辺りはまず浮かばないと思うので本当に素晴らしい。また "出来ぬ感じ~!" みたいな話し言葉を取り入れたり、発音の関係か "よいのかな" にするなどの細かい拘りも満載なテクニカルさも随所に見られる。 
 PVは家の中にいるあややがテニスの試合を見ているのだがその中のプレイヤーたちもみんなあやや。アウトロに合わせて目線を動かしていくラストシーンが絶品。テニスプレイヤーの佇まいを見ていても、あややの演技力の高さを感じる。アルバム『ファーストKISS』は前シングルに続いてのトラック2での収録で、話が繋がっているのかな? という妄想も。



LOVE 涙色

3rd LOVE涙色

作詞・作曲:つんく
編曲:渡部チェル
2001年9月5日発売 売上17.2万枚

 3枚目のシングル。ぐっと寒くなる季節にぴったりのミディアムナンバー。歌唱力の高さを感じられるセツナポップで、売上も一気に増え、2番ヒット作となった。渡部チェルが引き続きアレンジを担当しているが、これまでバンドサウンドが多めだったサウンドとは少し変わってキーボード(シンセかな)の音色がフィーチャーされており、その奏でるメロディが圧巻。星部ショウもハロプロ名イントロの1位として紹介していたが納得。あややの元気なボーカルも高音を使いながら儚さも演出されている。この年の紅白でも歌唱されている。
 切ないサウンドに合わせて歌詞も失恋の内容。"あの夜で全て終わった" はずの恋を忘れられないでいる主人公が描かれている。"メールは返さない" とあるので相手はまだ主人公に想いがあるのかな。"あの人と別れた" と冒頭のメールで言っているので相手が "あの夜" に浮気とか何かやらかしたか、"あの夜" に大喧嘩して別れちゃった後、相手は別の人と交際はしたようだけど。主人公も「忘れよう」としている。これ自体はよくあるテーマの歌詞だけど "どんなバイトしてるとか" などの近況がリアルで秀逸。"あなたの番号達 もうほとんど丸暗記してるみたい やっぱ くやしいわ" は屈指の名歌詞。
 PVは笑顔いっぱいの前2作と異なり、多彩な表現力を見せてくれる。セーラー服やお風呂のシーンなどファンに嬉しいカットもありつつ、本筋はマイクを前にした歌唱シーンとシンプルで「歌」を重要視している構成となっている。"LOVE" のときや "飽きっぽい 飽きっぽい" のときなどの振り付けもキャッチーで覚えやすい。